よもやま話とあれやこれ

どうでもいい話がたくさんできたらいいなぁ〜、と思っています!

見えないものを見ようとしない昨年末

 視力がとても悪い。多分0.1もないんじゃないだろうか。小学校高学年の時点で視力検査の輪っかはほぼ判別できず、視力検査は毎度私を惨めな気持ちにさせた。両親は私の近視の原因を遺伝もしくは本の読みすぎだと考えているようだが、布団の中でこっそりポケモンをやりすぎたせいだと私は知っている。そんな訳で、気がつけばもう人生の半分以上はメガネありきで過ごしている。

 

 昨年末、職場同期の忘年会にて、話題は「2023年に手を出して良かったもの/こと」になった。その時に同期のかわいい女の子が教えてくれたのがICL(眼内コンタクトレンズ)である。初めて知る概念だった。視力矯正の手段はメガネ、コンタクト、レーシックの3つくらいだと思っていたのだが、角膜を削るレーシックと違い、ICLは角膜を削らなくていいらしい。目の中にそのままレンズを入れるのだそうで、眼球を傷つけずないことが強みなんだそうだ。同期曰く「マジで革命が起こる」らしく、あなたも視力が相当悪いなら嬉しいのでは?ということで情報を共有してくれたのだ。

 が、びっくりするくらい心が動かなかった。視力悪いユーザーのほとんどはICLの概念を知った時、驚きもしくは喜びの感情を発露させる(同期調べ)ようなのだが、同期も驚くくらい私の感情は「無」であった。メガネをかけないと見えないのが当たり前になっていたから、ずっと見えすぎる方が私にとって異常になっていたようだ。あとは、手術料金に尻込んじゃったのもある(長い目で見れば、コンタクトを買うより全然安くはあるのだけど)。

 

 家に帰ってから、同居人にICLの概念と、それにあんまり心が動かなかった話をしたところ、「いつも視力が正常な方が絶対いいじゃん!」と力説された。

「手術料金も長い目で見れば絶対お得なんでしょう?」

 そうなんだけどさ…。明確な理由は別にないんだけど、なんか乗り気になれないんだよな〜どうやってこの気持ちを説明したもんかな〜〜、と考えていたところで、BUMP OF CHICKENのボーカル、藤原基央が眼鏡をかけない理由について「世界が見えすぎてしまうから」と語っていたことを思い出した。これだ。これにしよう。なんかかっこいい感じでうやむやにできるし。

「見えすぎる世界って怖くないかな?」

「なんで?」

 できるだけ知的に見えるよう微笑んだところ、澄んだ目でそう返された。そうだね、別に怖くはないよね。本気で不思議そうに聞かれるととても恥ずかしい。なんかカッコいいなと思って覚えていた言葉だけど、私は藤原基央ではないので、実際藤原基央にはどのように世界が見えているかわからないし、藤原基央は具体的に何が見えすぎて怖いと感じていたのかも知らない。

 でも、ここまで来たら最後までスカすしかない。苦し紛れに絞り出したのが「視力が悪いと、床はいつも髪の毛ひとつ落ちていないし、自分の顔が少し美人に見えるよ」という、絶対藤原基央は言わないだろうし、言ってほしくない言葉だった。なお、これに対する友人の返答が「ただの現実逃避やんけ」である。おっしゃる通り。

 

 情緒ある言葉であっても、使い方次第でめちゃくちゃにできるんだなぁと一抹の切なさと共に思った出来事である。それでもどうか大好きだと言わせてほしい、BUMP OF CHICKENのこと……。