よもやま話とあれやこれ

どうでもいい話がたくさんできたらいいなぁ〜、と思っています!

高校時代のあれこれ~引いて引かれた体育祭編~

「ギブアップ我らの女子力、ネバーギブアップ我らの勝利!」

五月晴れのさわやかな空に思想強めの白い横断幕が映える。ここは県立K女子高等学校。本日は絶好の体育祭日和である。

 

棒引きという競技をご存じだろうか。2つのチームが向き合った状態からスタートし、中央に設置されている数本の棒を陣地に持ち帰り、持ち帰った棒の数を競うという、基本的には瞬発力と走力が求められる種目である。

高校生活最初のイベントである体育祭は、女子高というだけあって、最も準備に時間をかけるのがチームごとに行う応援合戦だった。学年の縦割りでチームを決め、チームカラーで衣装を作り、歌って踊る華やかなものだ。先輩の熱血指導にややげんなりとはしていたものの、運動嫌いにとって競技にそこまで重きが置かれない体育祭というのは正直ありがたい。出場種目も基本的には希望制だったので、リレーや長距離走などの花形種目は適材に任せればよい。そんなわけで、「個人競技で周りの足を引っ張ることもないし、疲れなさそう」という極めて後ろ向きな理由で私は棒引きへの出場を決めたのだった。その目論見は、当日粉々に打ち砕かれることになるとも知らずに。

 

さて、話は戻って体育祭当日。

 

目の前には、目を血走らせた上級生がいる。最初の何本かは早い者勝ちで持っていかれたので、残った棒を持って走ろうとしたところで相手も気づいたわけだ。

「離せよ!!」

吠えるように叫ばれた。いや、女子力はギブアップしても人としての品性は捨てちゃあいけない。なんでたかが棒引きでここまでガチになれるんだろう。怖すぎる。

「絶対に離すんじゃない!!」

後ろからは味方であろう誰かの声が聞こえるけど、正直味方いらなかった。このままさっさと諦めて放したかった…。

ふと気が付けば大乱闘のまっさ中に自分は立っており、逃げることもできず涙目で棒を引っ張る羽目になった。チームの勝敗の結果は覚えていないが、引きずられながら死ぬ気でしがみついた棒は、結局相手側にぶん捕られたことは覚えている。ずるずると人間たちが引きずられていく様子を応援席から眺めていた友人は「人生の中で一番ドナドナを流したいと思った光景だった」と語った。買ったばかりの体操着は上下ともに砂まみれで、なんならジャージのズボンは擦り切れができていた。高校一年生、最初の楽しいイベントであるはずの体育祭で、自分が入学したのは脳筋高校だったという事実を知ったのである。

 

その後も、「逃げ」種目であるはずのドッジボールで即死級の剛速球が飛んでくる球技大会、「健全な精神は健全な肉体に宿る」という謎スローガンのもと極寒の季節に行われる10キロマラソン、受験期なのになぜか増える体育の授業(理由は前述のとおりである)、そして男手なんてないので気合と根性で日常的に行う重い荷物の運搬。そんなことを三年間繰り返したおかげか、精神の虚弱さに反比例するようにかなり強靭な肉体を手に入れた。ついでに、気合と根性でたいていのことは何とかなることを知ってしまったおかげで、今でも肉体労働は人手を借りず(反射で手助けを断ってしまうため借りられず)、一人で何とかしてしまう自分がいる。

「重いでしょう、手伝います」と言ってくれる優しい気づかいに、条件反射で「あ、大丈夫です~」と微笑むたびに脳裏に流れるのは、愛すべき我が母校の校歌である。